借地権と底地の微妙な関係

特に市街地や中心地では、建物の敷地が借地権である事も少なくありません。
お寺の多い某高級住宅地の土地を調べてみると、戸建住宅が建っているのに土地
はお寺の所有で借地権が設定されていた、なんて事もありました。
今回は、そんな借地権とその対にある底地について、価値の考え方や割合につい
て考察してみたいと思います。

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 借地権とは?
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借地権は、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と借地借家法で
定義されていますが、要は「地代を払って建物を建て他人の土地を利用できる権
利」と言えます。
借地権には旧法(借地法)による借地権と新法(借地借家法)による借地権があ
り、新法による借地権は普通借地権と定期借地権に分かれます。

一般的に言う「借地権」には、旧法の借地権と新法の普通借地権があり、内容に
差はありますが、両者には正当事由が無ければ地主側は更新を拒絶できないとい
う大きな共通点があります。
一方、定期借地権は契約期間が満了になれば借地権は消滅しますので、上記の借
地権とは性質が大きく異なります。

※過去ブログで「事業用定期借地権」について書いた記事がありますので、ご興
味のある方はご覧ください。

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 借地権の「価値」とは?
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では、借地権の「価値」とは一体何でしょうか?
他人の土地に建物を建てて長期間その土地を専有できるという事は、もちろん価
値がありますよね。
でも、それだけではありません。

契約期間が長期に及べば、地価がどんどん高くなっても地代はそう上げられず、
客観的に見て低廉な地代で土地を利用できる場合があります。
また、借地権設定時・更新時に一時金が支払われる事があり、それによって毎月
の地代が安くなっている場合もあります。

これらは、いわゆる「借り得」というメリットを借地権にもたらし、当然ながら
その借地権の価値を上げる効果があります。
逆に、借り得があまり無い借地権には、その分価値も魅力もあまり無いと言えま
す。都心の超一等地なら別かもしれませんが・・

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 借地権と底地の関係は?
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借地権と底地は当然ながら一対の関係にありますが、その割合はどう見ればいい
のでしょうか。

一つの目安は、国税庁の路線価図にある借地権割合です。
A(90%)~G(30%)まで、七段階で借地権割合が示されています。
ただ、路線価図が無く、固定資産税評価額の倍率で評価する地域もありますので、
そのような地域内であれば、近隣や類似地域の路線価図にある借地権割合を参考
にされるのもいいかもしれません。
※路線価図

上記は単純な計算方法ですが、一時金が支払われている借地権の場合には、更新
時期が近づけば一時金の支出が近いので価値は下がり、一方の底地は一時金の収
入が近いので価値は上がります。更新直後の場合は、この逆ですね。

また、借地権と底地を足せば所有権の価値?と思う方もいるかもしれませんが、
実はそうではありません。借地権も底地も完全所有権の状態にある土地よりも流
動性が低く、その分、経済価値も低くなります。
従って一般的には、「借地権」 + 「底地」 < 「土地の所有権」 となります。

いかがでしたでしょうか。
借地権と底地の価値を評価する場合には、その割合を考えた上で、両者の合計が
土地所有権の価値にならない事、更に一時金の額や時期、契約内容等も検討しな
ければなりません。
なかなか微妙で複雑な世界ですね。