「路線価」は万能ではない?

8月末に東京地裁で、「路線価に基づく相続財産の評価は不適切」との判決が下っ
たそうです(日経新聞11月19日)。
通常、路線価の付いている地域(付いていない地域もあります)では、それをベー
スに土地の相続税評価額を計算しますが、今回の判決で否定された事が波紋を広
げています。
では、何が問題だったのでしょうか?

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 「取引価格の8割程度」と言われているが
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路線価は実勢価格の8割程度と言われており、一つの目安にもなります。
とは言え、土地は個別性が強い上、実勢に比べて路線価は上下させにくい面があ
ります。例えば、路線価が急に上昇したら相続税も急騰し困る人も出るでしょう
し、その反対の場合は税収に影響が出ます。

今回のケースでは、亡くなった男性が生前に購入した2棟のマンションの合計を、
相続人が路線価などから約3.3億円と評価したところ、国税側が「路線価による
評価は適当ではない」と判断しました。

実際に男性が購入した金額は、2棟合計で約13.9億円と、約4倍だったそうです。
国税当局の不動産鑑定でも約12.7億円と、購入金額に近く、路線価とはかけ離れ
ています。

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 国税が抜いた「伝家の宝刀」
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国税当局は、男性のマンション購入時期が死亡する2年半~3年半前と比較的最近
であったこともあり、節税目的であり「相続税の申告漏れにあたる」と今回のケー
スを問題視しています。

財産評価基本通達には、評価が著しく不適当と認められる財産の価額を国税庁長
官の指示で見直すことができる、という規定があり(総則第6項)、今回は国税
当局がそれを適用し東京地裁も認めた形になりました。

一方、原告の相続人らは判決を不服として控訴しているそうです。

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 規定の適用に課題
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公平性の観点から、極端な節税が問題視されるのは仕方ないかと思われます。
しかし、明確な基準がないまま上記の規定が適用されると、濫用の恐れもありま
す。

節税目的での不動産取得は広く行われていますし、もちろん悪いことでもありま
せん。
ただし、今回のようなケースが頻繁に起こると、期待したような節税効果が出な
いリスクも考慮しなくてはならず、不動産取引にも影響が出る可能性があります。

従って、路線価評価に例外があるのであれば、安心な不動産取引を行う上でも基
準策定が喫緊の課題となりますが、路線価と実勢価格との乖離をどう見るかなど、
課題も多そうです。

いかがでしたでしょうか。
ちなみに、ごく稀ですが、路線価よりも鑑定評価額の方が安くなるケースもあり
ます。路線価は実勢価格の8割程度ですから、その土地に余程の個別的な事情が
ある場合に限られますが・・。