「所有者不明土地」が売却可能に?

新聞やニュースでご覧になった方もいるかもしれませんが、国土交通省と法務省
で、所有者の全容が分からない土地の売却が可能になる仕組み作りを進めている
そうです。
来年の通常国会に関連法改正案の提出を目指すとの事ですが、今回はその概要と
課題についてご紹介したいと思います。

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 所有者不明の土地は九州本島より大きい
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もはや深刻化してきている所有者不明土地問題。政府や国交省も対策を急いでい
ますが、なかなか追いついていないのが正直なところかと思います。

国土計画協会の調査・発表によると、2016年時点で所有者不明の土地面積は約
410万ヘクタール。九州本島の土地面積が約367万ヘクタールとの事ですから、そ
れを超える面積です。
調査時点から3年ほど経過した現在は、所有者不明土地の総面積はさらに増加し
ていると考えられ、いかに土地の有効利用を阻んでいるか、その経済的不利益の
大きさを感じて頂けるかと思います。

尚、調査等の詳細は同協会のリンク先ページ下段「最終報告」にありますので、
ご興味のある方はご覧ください。

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 一部所有者でも土地の売却が可能に
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仕組みの概要ですが、現在は土地が共有の場合、全員の承諾がなければ売却でき
ないところ、一部の所有者のみでも売却を可能にしようというものです。

例えば、ある土地が相続で3人の共有となり、1人が連絡先不明で承諾が得られな
い場合、2人の持分しか売却できず大きな障害となっていました。
新たな仕組みでは、2人が売却したい場合、不明所有者1人の持分について金銭を
法務局に供託する事で、残りの土地の持分を取得し共有関係を解消できるように
します。

因みに、共有土地の賃貸や造成等の整備については、民法上の管理行為(252条)
や変更行為(251条)に該当し、過半数の賛成や全員の同意が必要でしたが、こ
ちらも不明となっている人以外の所有者の承諾で可能にするとの事です。

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 大きなビジネスチャンスだが課題も
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総量で九州より大きな地積の土地が円滑に売却・賃貸できるようになれば、ご承
知の通り、間違いなくビジネスチャンスは大きく拡がります。
非常に喜ばしい事ですが、課題もいくつかありそうです。

課題の一つ目は、不明者の探索です。
仕組みを利用するにあたり、登記簿や固定資産台帳等の調査、行政機関や親族等
への聞き取りも必要との事で、いわゆる一般の方が行うにはややハードルが高く、
代行可能かどうかは今のところ不明です。

もう一つは、「公告」が前提となっている事です。
他の所有者が異議を申し立てる機会を与える為ですが、一般にはあまり知られて
おらず、本当に公告だけで済ませて良いのかという課題が残ります。

いかがでしたでしょうか。
所有者不明の土地は山林だけでなく、都市部の宅地も少なくないようですので、
仕組みを上手く活用できれば、経済的インパクトもかなり大きいと考えられます。
詳細はこれから更につめていくようですが、来年法案成立、再来年施行とスピー
ディーに進む事を期待したいです。